理論電気回路回路網・過渡現象出題頻度: ★★☆☆☆配点: 5点
2025年8月31日実施 理論 A問題 問10
図の回路のスイッチ S を t = 0 s で閉じる。電流 iS [A] の波形として最も適切に表すものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,スイッチ S を閉じる直前に,回路は定常状態にあったとする。

選択肢
💡解説
📐使用する公式
•RL回路の過渡応答(電流の上昇):i(t) = VR × (1 − e−Rt/L) [A]
•コンデンサ電圧の過渡応答(電圧の減衰):v(t) = V0 × e−t/RC [V](V0 は t = 0 での初期電圧)
•キルヒホッフの電流則(KCL):一つのノードに流れ込む電流の総和と流れ出る電流の総和は等しい
1スイッチ S を閉じる直前(t < 0)の定常状態
S が開いている間,電流は電源 → 1Ω → 1H → 2F(コンデンサ)→ 1Ω という一つの直列閉回路のみを流れる。定常状態ではコンデンサは直流電流を通さないため,この閉回路の電流は 0A である。よってインダクタの電流 iL(0−) = 0A となる。また電流が 0A のため両方の 1Ω 抵抗での電圧降下はなく,電源電圧 1V がそのままコンデンサにかかる:VC(0−) = 1V となる。
2スイッチ S を閉じた直後(t = 0+)の値
スイッチ S が閉じると,インダクタと S の接続点(ノード)はスイッチを介して回路下側の線に直接つながる(理想スイッチのため 0Ω)。
•インダクタの電流は不連続に変化できないため,iL(0+) = iL(0−) = 0A のまま。
•コンデンサの電圧も不連続に変化できないため,VC(0+) = VC(0−) = 1V のまま保持される。この電圧がそのままコンデンサ側の 1Ω 抵抗にかかるため,コンデンサ側の分岐電流は VC(0+)1Ω = 11 = 1A となり,この電流はノードに向かって流れ込む方向である。
•キルヒホッフの電流則より,iS(0+) = iL(0+)+(コンデンサ側分岐からノードへ流れ込む電流) = 0 + 1 = 1A となる。
→ iS は 0A からではなく,1A から始まる。
3時間変化(t > 0)の一般式
スイッチが閉じている間,このノードの電圧は常に 0V に固定される(理想スイッチで下側の線に直結されているため)。よって左右の分岐はそれぞれ独立に過渡応答する。
•インダクタ側は電源 1V・抵抗 1Ω・インダクタ 1H の単純な RL 直列回路として,電流が 0A から最終値 11 = 1A へ上昇する:
iL(t) = 11 × (1 − e−1×t/1) = 1 − e−t [A]
•コンデンサ側は,コンデンサ電圧が初期値 1V から時定数 τ = RC = 1×2 = 2s で 0V へ減衰する:
VC(t) = 1 × e−t/2 [V]
よってコンデンサ側の分岐電流(ノードへ向かう方向):iC(t) = VC(t)1Ω = e−t/2 [A]
•キルヒホッフの電流則より:
iS(t) = iL(t) + iC(t) = (1 − e−t) + e−t/2 [A]
4波形の判別根拠
上の式に基づいて各選択肢を判別する。
•t = 0 での値:iS(0) = 1 − 1 + 1 = 1A となる。0A から始まる波形((2)・(4))は,コンデンサ側分岐からの流入電流を考慮していないため誤り。
•t > 0 での挙動:iS(t) − 1 = e−t/2 − e−t = e−t/2 × (1 − e−t/2) となる。t > 0 では e−t/2 も (1 − e−t/2) も共に正の値となるため,この式は常に正となる。つまり iS(t) は常に 1A より大きい値をとり,1A を上回った状態から時間とともになめらかに 1A へ収束する(オーバーシュートして単調に減衰する波形)。
1A 未満に落ち込みながら振動して収束する波形((1))は,2つの指数関数の和であるこの回路の応答(振動は発生しない)と一致せず誤り。過渡的な変化が一切なく常に 1A で一定の波形((5))も,L・C による過渡応答が存在するため誤り。
•以上より,1A から始まり,1A をわずかに上回るピークをつけたのち滑らかに 1A へ収束する波形である (3) が正しい。
✅答え:(3)
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